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外国人研修生・技能実習生の宿舎における事故防止について

2008年7月1日

 外国人研修生・技能実習生が、制度の目的である日本の進んだ技能等を習得するためには、研修・実習現場はもちろん生活の場をも含め、研修生・技能実習生自身にかかる安全を確保することが不可欠です。
一方、研修生・技能実習生の生活の中で多くの時間を占める寄宿舎等宿泊施設(以下、宿舎という)内における事故が頻発しています。
このようなことから、JITCOは厚生労働省の委託を受け、宿舎内における研修生・技能実習生の事故防止対策を明らかにすることを目的として、安全専門家及び受入れ機関の実務者からなる検討委員会を設置し検討を行ってきましたが、2008年3月に一定の結論を得、検討委員会から報告がありました。
この報告を踏まえ、外国人研修生・技能実習生の宿舎における事故防止対策として、当面の重点事項を下記のとおり示しますので、宿舎における事故防止に努めて下さい。
なお、宿舎における生活の安全と健康管理には、怪我をさせないことの他、食事、睡眠、運動、コミュニケーション等心身の健康管理面の対策を講じることも必要でありますが、ここでは、安全管理面に絞っています。

 

1 宿舎内事故発生状況

  1. (1) 外国人研修生・技能実習生の宿舎内における事故発生件数は把握できないが、外国人研修生・技能実習生総合保険(「JITCO保険」)給付データによれば、外国人研修生・技能実習生の大幅な増加に比例して外国人研修生・技能実習生に関する保険請求件数も大幅に増加しているなかで、保険請求件数の四分の一が宿舎内で発生した事故によるものである。
  2. (2) 宿舎内で発生した事故の内容は次のとおりである。
    • ① 事故の型別で分類すると、下図のとおり、転倒、切れ・こすれ、火傷が多く、これらで全体の6割を占めている。
    • ② 行動別に分類すると、下図のとおり、食事調理中、就寝中が三分の一を占め、それ以外が三分の二あるが、階段昇降中、廊下歩行中、扉開閉中、室内掃除中、入浴中、引越作業中など多様である。
    • 宿舎内事故の型別分類宿舎内事故の型別分類
    • ③ 主な食事調理中の事故は、包丁による切り傷、揚げ物中の火傷が多く、就寝中の事故としては、湯たんぽ等による火傷が多い。
    • ④ また、2002年10月には、技能実習生2名が宿舎の火災で死亡している。

2 対象とする宿舎

         宿舎には、労働基準法(事業場附属寄宿舎規程)の適用されるものとされないものがあるが、適用されない宿舎においても災害が発生していることから、双方を対象とする。
    なお、宿舎の施設面については、労働基準法による規制に限定したが、労働基準法の他に建築基準法、消防法などの関連法規の規制に留意する必要がある。


3 宿舎内の事故防止対策の重点事項

         宿舎内での事故を防止するためには、宿舎の施設や設備などに関する物的対策と、  施設・設備・器具等の使用方法の教育などの人的対策が必要であるが、具体的には、次の事項が当面の対策として必要と考える。

  1. (1) 宿舎の施設面での安全対策
    • ① 労働基準法(事業場附属寄宿舎規程)が適用される宿舎(寄宿舎)の施設に関する安全対策は、事業附属寄宿舎規程の定めによるが、主たるものは次のとおりである。
      • ア.  爆発物・可燃性ガス等の火災による危険の大きい物を取扱い・貯蔵する場所の付近、高熱・ガス・蒸気・粉じんの発散等衛生上有害な作業場の付近、騒音・振動の著しい場所、雪崩・土砂崩壊のおそれのある場所、湿潤な場所・出水時浸水のおそれのある場所、伝染病患者収容建物及び病原体によって汚染のおそれが著しいものを取り扱う場所の付近に宿舎を設置しないこと。
      • イ.  男女を同一棟に収容する場合は、完全な区画を設け、出入口を別にすること。
      • ウ.  寝室は地下又は(耐火建築物を除いて)3階以上に設けないこと。
      • エ.  2階以上の寝室に寄宿する建物には、容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を二カ所以上(収容人数15人未満は一カ所)設けること。但し、避難設備がある場合はこの限りでない。
      • オ.  屋外に通じる出入口の戸は外開き戸又は引き戸とし、何時でも容易に外部に避難できるようにしておくこと。
      • カ.  非常ベル、拡声器等の非常事態通報設備を設置すること。
      • キ.  適当かつ十分な消火設備を設置すること。
      • ク.  必要な掃除用具を備え付けること。
      • ケ.  階段は次のとおりとすること。(常時使用しないものは除く)
        踏面21㎝以上・蹴上22㎝以下・勾配は40度以内とする。
        蹴込板又は裏板(屋外除く)を設け、側壁がない場合は高さ75㎝~85㎝の手すりを設ける。階段の幅は内法75㎝以上とし(屋外を除く)、各段より高さ1.7m以内に障害物がないようにする。
      • コ.  廊下は片廊下とし、幅1.2m以上とし、中廊下とするときは幅1.6m以上とすること。
      • サ.  寝室については、床の間と押入を除いて一人あたり2.5㎡(1.5畳超)以上・1室16人以下とし、寝具収納設備(ベッド使用を除く)・個人別の私有物収納設備・室面積の七分の一以上の有効採光面積を有する窓・採暖の設備が必要であること。(注1――ガイドライン・JITCO指導では6畳2人程度)
      • シ.  各人専用の寝具、ふとんのえりカバー・枕カバー・敷布を備え、清潔に保持すること。
      • ス.  就眠時間を異にする二組以上の研修生・技能実習生を同一の寝室に寄宿させないこと。
      • セ.  食堂又は炊事場を設ける場合は、照明・換気が十分であること、食器・炊事用器具を清潔に保管すること、ハエその他の昆虫・ネズミ等の害を防ぐための措置を講ずること。
      • ソ.  その他、便所、洗面所、洗濯場、物干し場、浴場につき人数に応じた数を確保し、清潔にしておくこと。
    • ② 労働基準法(事業場附属寄宿舎規程)の適用されない宿舎
      外国人研修生が日本に入国するに際し、自らが宿舎を探し確保することは極めて困難であることから、受入れ企業が宿舎を確保しており、また、火災防止のため及び近隣住民や研修生・技能実習生同士のトラブル防止や研修生・技能実習生の健康管理のため、宿舎及び宿舎内の研修生・技能実習生の行動を管理している(せざるを得ない)実態がある。一方、宿舎の形態は、多人数入居の寄宿舎的なもの、アパート等の共同住宅、戸建てなど様々であり、一律に施設面の対策を示すことは適切ではない。
      そこで、労働基準法(事業場附属寄宿舎規程)が適用されないと考えられる宿舎の施設については、事業場附属寄宿舎規程の内容を準用し、火災時などの避難設備やトイレなど衛生設備、適切な居室空間の確保が必要である。
      具体的には、次のとおりである。
      • ア.  宿舎を確保する場所は、
        爆発物・可燃性ガス等の火災による危険の大きい物を取扱い・貯蔵する場所の付近、高熱・ガス・蒸気・粉じんの発散等衛生上有害な作業場の付近、騒音・振動の著しい場所、雪崩・土砂崩壊のおそれのある場所、湿潤な場所、出水時浸水のおそれのある場所、伝染病患者収容建物及び病原体によって汚染のおそれの著しいものを取扱う場所の付近を避けること。
      • イ.  2階以上の寝室に寄宿する建物には、容易に屋外の安全な場所に通ずる階段を二カ所以上(収容人数15人未満は一カ所)設けること。但し、避難設備がある場合はこの限りでない。
      • ウ.  適当かつ十分な消火設備を設置すること。
      • エ.  寝室については、床の間・押入を除いて一人あたり2.5㎡(1.5畳超)以上とし、個人別の私有物収納設備・室面積の七分の一以上の有効採光面積を有する窓・採暖の設備を設けること。(注1――ガイドライン・JITCO指導では6畳2人程度)
      • オ.  就眠時間を異にする二組以上の研修生・技能実習生がいる場合は、寝室を別にすること。
      • カ.  食堂又は炊事場を設ける場合は、照明・換気が十分であること、食器・炊事用器具を清潔に保管すること、ハエその他の昆虫・ネズミ等の害を防ぐための措置を講ずること。
      • キ.  トイレ、洗面所、洗濯場、浴場は清潔にしておくこと。
  2. (2)宿舎内の行動面での安全対策
    宿舎内における行動別の事故防止対策は次のとおりである。
    ① 食事の調理中
      • ア. 日本と研修生・技能実習生の母国では、使用する調理器具が異なる場合があり、特に日本と中国の包丁では、大きさも異なり使い方も違うために指を切りやすい。また、中国において揚げ物などに使う鍋は、肉厚で重く、火が日本のフライパンのように中へは回りにくく、鍋は大きいので一般に油が飛び散ることが起きにくいのに比べ、日本のフライパンは容易に火が回り火傷する。
      • イ. 対策として、調理の仕方、調理器具の使い方などの教育が必要である。
        また、火災防止のために消火器の設置とその使用方法の説明が必要である。
    • ② 就寝中
      • ア.  湯たんぽによる低温火傷が目立つが、暖房方法(中国は床暖房)の違いと、見よう見まねで即導入することに問題がある。
      • イ.  対策として、湯たんぽなど暖房器具の使用方法の説明が必要である。
    • ③ 一般生活行動中
      • ア.  階段昇降中の転落、廊下歩行中の転倒、家具移動中の挟まれ・無理な動作、入浴中の転倒、掃除中の物の落下・無理な動作、洗濯関連行動中の墜落・転倒、扉開閉中の挟まれなどによる怪我が発生している。 これらの事故は日本に長年住んでいる者にも同様に発生するが、研修生・技能実習生の習慣の違いなど特徴的な問題があるとも考えられる。
      • イ.  対策として、一般生活行動中の一般的安全教育に加え、宿舎内での生活活動を円滑にするルール化や習慣化が必要であり、それを実地に指導する生活指導員やリーダーの適切な活動が必要である。
    • ④ 天災地変時の対応
      地震、台風等非常時の対応として、避難通路の確保、家具の転倒防止措置、懐中電灯、情報収集のためのテレビ・ラジオ等が必要である。
  3. (3)宿舎での生活に関する安全教育の必要性
    ① 安全教育の必要性と時期は次のとおりである。
      • ア. 受入れ機関は、研修生・技能実習生に対して職場における安全教育と同様に、宿舎内における事故防止のための教育を行うことが必要である。
        また、宿舎内で使用する調理器具等各種器具の説明書の多くは日本語であり、外国人研修生・技能実習生の母国語表示は少ないことから、器具の取扱について教える必要がある。
      • イ. 宿舎についての教育は、宿舎における事故防止のための知識を有する者(消防関係機関、事故防止の知識を有する受入れ機関生活指導員等)により実施する必要がある。
      • ウ. この教育は宿舎入居時に実施することが必要である。
    • ② 宿舎に関する教育の内容として、次の項目が考えられる。
      • ア.  火災予防のための電気器具・ガス器具の取扱方法、消火器の使用方法、避難方法
      • イ.  安全に調理を行うための調理器具の取扱方法。暖房器具の使用方法
      • ウ.  地震、台風等の天災地変時の対応(火の始末、避難方法、連絡方法等)
      • エ.  その他、入浴・掃除・家具移動など一般生活行動中の事故の防止対策

注1――― 一人当たりの床面積等について、2.5㎡は労基法上の最低基準であり、厚生労働省労働基準局の「望ましい建設業附属寄宿舎に関するガイドライン」では、1室2人以下、1人当たり床面積4.8㎡以上(3畳)となっており、JITCOも6畳に2人程度を指導してきている。