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外国人研修・技能実習に関する成果事例

事例7 「ステップアップ基準」が技能修得の道しるべです
(埼玉県羽生市 日東鉄工株式会社)

2009年2月


取締役・総務部長の杉井謙治さん

取締役・総務部長の杉井謙治さん

 「当社では、入国した研修生・技能実習生に対し、日本で効果的な研修・技能実習が実施できるよう具体的な基準を設けています」。会社独自で定めた達成基準について日東鉄工株式会社(以下「日東鉄工」)取締役・総務部長の杉井謙治さんが説明してくださいました。日東鉄工は、研修・技能実習に必要な技術と日本語の2つの基準について定めた「ステップアップ基準」を設けています。技術と日本語は技能修得の両輪であり、どちらが疎かになっても満足のいく結果は期待できません。取材して日東鉄工の成果の秘訣と特徴はここにあると思いました。


 日東鉄工は1957年に設立された、ビル、学校、住宅などの鉄骨製品を製造する会社です。1992年に新設した羽生工場では、高精度・高品質の製品を生産しています。


日東鉄工(株) 外観

日東鉄工(株) 外観

 日東鉄工の羽生工場にお邪魔したのは、12月のよく晴れた日でした。当日は、同社の第一次受入れ機関である社団法人日中産業技術交流協会(以下「日中産協」)専務理事・事務局長の山口栄一さんと同協会業務課・管理課の渡邊菜美さんも同行しました。羽生工場はさわやかな外壁を持ち、広い平地でひときわその存在感を示していました。敷地内に入ると、同社代表取締役社長の齋藤眞由美さんの出迎えを受け、室内に案内されました。日東鉄工は技能実習制度創設前の1983年から溶接技術に留まらず、日本の現状を伝えることを主眼に研修生の受入れを開始しており、途切れることなく年に1人から2人、多いときには3人の研修生を継続的に受け入れてきました。以前は、研修生は1年で帰国していましたが、技能実習制度創設後、2001年からは技能実習を前提とした研修生を受け入れており、現在は研修生2名と技能実習生5名がいます。


代表取締役社長の齋藤眞由美さん

代表取締役社長の齋藤眞由美さん

 日東鉄工は前述した「ステップアップ基準」を導入し、その高いレベルに到達するよう研修生たちを日々指導しているとのことでした。その基準をクリアすることは研修生たちにとって決して簡単なことではありません。しかし、それをクリアすれば褒賞が用意されています。日中産協は、試験に合格した研修生たちに報奨金を支給することとしており、当日はちょうどJITCO認定評価システム中級の試験に合格した技能実習生たちに、日中産協の渡邊さんから報奨金が支給されていました。研修生たちが自分の努力を実らせ、その成果を喜ぶところを見ることができました。


 「ステップアップ基準」の内容は、現地での面接時に予め研修生候補者に伝えますが、入社日にも説明します。「その際には先輩たちにも同席してもらい、内容を改めて確認してもらいます」と杉井さんは言います。


 その具体的な基準とは、研修から技能実習移行時に制度が求める、JITCO認定評価システム初級の他、技能実習1年目修了時にJIS溶接技能者評価試験(厚板下向)(又はJITCO認定評価システム中級)及び日本語能力試験2級以上(又はJTEST(実用日本語検定)600点以上)です。


溶接技術のポイントを説明する工場長の伊藤一彦さん

溶接技術のポイントを説明する
工場長の伊藤一彦さん

 研修生たちには、この技術と日本語の両方ともの基準を満たすことが求められています。


 「この基準は私たちの過去10年間の受入れ実績の蓄積から生み出したものです」と杉井さんは言います。工場長の伊藤一彦さんは「この技術の基準は、溶接技術の基礎であり、これがないと教えたい技術を教えることができません。また、日本語は研修生たちの安全のために必要不可欠です」と、基準の必要性とそれがどのように現場で機能しているのかについて教えてくださいました。


溶接作業中の技能実習生

溶接作業中の技能実習生

 工場内で研修生たちは鉄骨製品を製造します。作業現場にお邪魔させていただくと、大きな機械がいくつもあり、緊張感が漂っていました。重たそうな鉄骨が並べられ、溶接の青い火花が飛び散っていました。伊藤さんは「現場の研修・実習内容はそのまま試験で役立つものになっています。その意味では、日常の積み重ねが試験勉強になります。まず研修指導員がやってみせて、その後に研修生たちにやらせてみるという手順で研修指導をします。また、溶接技術は組立てと溶接の狙い場所がポイントになりますので、そこを重点的に教えます」と話してくださいました。


王さんと超音波検査を行う齋藤さん

王さんと超音波検査を行う齋藤さん

 他に試験対策として超音波による検査も行います。そうすることで溶接内部の欠陥についての詳しいことが分かります。非破壊試験技術者(超音波探傷)である齋藤さんは、多忙な社長業の傍ら、暇を見つけては現場に足を運びます。「若い研修生たちに溶接に関する先進的な技術を教えることは、自分にとっても大変良い経験になります」と齋藤さんは、教える喜びを語ります。


 このように日東鉄工は経験に裏付けられた基準を設けることで、研修生たちのモチベーションを高め、彼らの能力を最大限に引き出す工夫をしています。


 「ステップアップ基準」は研修生たちに目的意識を与え、また、将来を見据えて、計画的に行動し、前向きな生活を送ることの意義を彼らに伝えていると感じました。


適格性証明書を手にハイ、ポーズ!

適格性証明書を手にハイ、ポーズ!

 それは、面談した技能実習生たちの習熟度からも言えることです。技能実習生の王建安さんは、2つの達成基準をクリアしたことについて、「勉強したことの成果があって嬉しかった」と言います。続いて、後輩にどのようなアドバイスをしますか、という問いに対して、王さんは「私の夢は日本にいる間にいろいろ勉強をし、多くのことに挑戦することです。そして夢は見るものではありません。夢は叶えるものです」と力強く語ってくれました。また、馬海峰さんは「試験をチャンスとして勉強できたおかげで、技術を向上させることができました」と流暢な日本語で話してくれました。


 日中産協の山口さんも日東鉄工の取組みについて高い評価をしています。「ステップアップ基準」の効果について傘下組合員に広く紹介していきたいとのことでした。