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外国人研修・技能実習に関する成果事例

事例5 「誠意」が生み出す信頼関係 (宮城県大崎市 宮城県アパレル協同組合)

2009年2月


 ササニシキとひとめぼれ誕生の地として有名な宮城県北西部の大崎市古川にある、宮城県アパレル協同組合(以下「宮城県アパレル」)にお伺いしました。宮城県では、縫製系の企業が仙台よりも北の方に多いため、宮城県アパレルは古川に拠点を置いているそうです。宮城県アパレルの外観や建物内の第一印象は、「アットホームな感じ」でした。しかし、実際に話を伺って、その受けた印象が、建物からというよりは、宮城県アパレルの企業や研修生・技能実習生を家族のように親身になって大切に思う気持ちと、気さくで実直な性格からにじみ出た印象であったのかもしれない、と思いました。


宮城県アパレル 外観

宮城県アパレル 外観

 宮城県アパレルは、2000年12月に設立され、2001年8月から組合として第1期生となる19名の研修生を受け入れ、現在受入れ企業数は11社で、受入れ実績は464名(全員中国人女性)にも上ります。  理事長の及川秋穂さんと、事務局長の眞木勇治さんにお話を伺いました。


 企業の従業員が高齢化していき、せっかく培った技術を残していきたいにもかかわらず、若者への技術の伝承が難しい。そのような状況の中、外国人研修・技能実習制度を知り、外国人の研修生たちの力を借りてやっていくことも一つの手であると考えたのが、研修生たちを受け入れ始めた経緯だそうです。


理事長の及川秋穂さん

理事長の及川秋穂さん

 及川さんに日々大切にしている心掛けを伺うと、企業に対しても研修生たちに対してもいつも「誠意」を持って接していくことだと思っていると、笑顔の中にも強く熱いまなざしで語ってくださいました。その後、宮城県アパレルが企業に対して行っていることを伺っているうちに、及川さんの大切にしている心掛けは、そのまま組合の姿勢として定着していることを実感させられました。


事務局長の眞木勇治さん

事務局長の眞木勇治さん

 宮城県アパレルは、毎月定期的に理事会を開催し、常に現場のことを考えながら企業への指示を統一するため、自転車・ゴミ出し・制度の徹底・研修生たちの貴重品を保管する金庫等、大変細かいことも納得いくまで話し合って決定し、さらにその決定事項は、各受入れ企業の代表者を集めて行う「代表者会議」で直接伝達しています。また、企業の監査は、3ヶ月に1度の頻度で、理事(交替制)と事務局長そして必要に応じて通訳の人が同行し、理事たちも直接自分の目で確認しているそうです。それだけでなく、各企業の生活指導員を集めて勉強会を開催したり、各企業で研修生たちを交えてレクリエーションをする際には補助金を支給したり、何か問題があったときは休日返上してでも(必要に応じて通訳の人も)すぐに駆けつけて解決する体制をとっており、事務局はたったの2名であるにもかかわらず、企業や研修生たちに対して真心を持って、細やかになおかつ俊敏に全力でサポートしています。その誠意と熱意ある対応が自然と企業や研修生たちに伝わっているためか、企業側も組合の方針に対し大変協力的で、組合と企業が一丸となって良い相乗効果を生み出しているのだと感じました。


 宮城県アパレルでは、送り出し選抜の際、各企業の代表者が中国まで直接出向き、自分の目で見て自社のカラーに合う、なおかつ自社に必要な研修生を選抜しています。そのため、各企業の人たちも、新たに受入れた研修生に対する思い入れがより一層強くなるのかもしれません。


 宮城県アパレルとして、力を入れていることの一つに上位級の受検促進があります。2008年も技能実習1年目修了時に基礎1級を受検させ、多くの合格者を出しています。さらに、今後は随時3級も積極的に受検するよう意識づけを行っていきたいと、意気込みを熱く語ってくださいました。


組合作成の縫製関連専門用語集(抜粋)

組合作成の縫製関連専門用語集(抜粋)

 宮城県アパレルでは、集合研修でも幾つかのユニークな取組をしています。まず、日本語教育では、宮城県アパレルが独自に作成した縫製関連の専門用語集を使用し、早く仕事に慣れるようサポートしています。また、研修・技能実習中にホームシックにかかってしまったり辛いことがあったとき等に、初心を思い出してまたやる気を取り戻してもらえるよう、集合研修時に各自のノートの裏表紙に各自の目標や夢を書かせているそうです。ちなみに、その目標や夢は研修生たちが自分のために書くものであるため、組合や企業の人たちが見ることはないそうです。そのノートは、まさに未来の自分のために書きつづるタイムカプセルであり、技能実習が修了して帰国した後いつまでも思い出として残るものとなり、一見ちょっとした工夫でも、研修生たちにとって宝物になるであろう良いアイデアだと思いました。


 さらに、健康関連については、環境も変わり健康には注意して元気に研修等を行ってもらいたい、という思いから、「食育」にも力を入れています。市の保健所から保健師や栄養士の方に来てもらい、バランスの良い食事について写真入りの献立資料等を使用して分かりやすく教えてもらったり、企業の社長が自らスーパーマーケット等で一般的な食材を調達して実際に研修生の前で日本の家庭的な料理を作って見せたりもしています。


「食事のバランス」講習風景

「食事のバランス」講習風景

企業の社長が料理を教えている風景

企業の社長が料理を教えている風景

 また、防災関連については今後、2008年に完成した登米市消防防災センターで、地震や火災時の煙の体験そして救急研修を行う予定だそうです。


 様々なことを創意工夫し、いつも企業や研修生たちがどうやったらもっと快適で上手くやっていけるのかを考え、少人数体制でも誠意を持って日々懸命に奔走し続け企業と二人三脚で事に当たっている、宮城県アパレル。そのため企業や研修生たちから絶大な信頼を得ていることは、この後、2つの傘下企業に伺った際の企業の方々や研修生たちの、共に自然に歓迎し頼りにしている態度で、改めて実感させられることになりました。



優しい笑顔と楽しい笑顔――宮城県登米市 及川被服株式会社

及川被服 外観

及川被服 外観

 可愛らしい洋風な建物の及川被服株式会社(以下「及川被服」)に伺いました。訪問時、ちょうど休み時間で会社敷地内にある寮から出てきた研修生たちが明るく元気に「こんにちは!」とあいさつしてくれました。また、そのうちの1人は、楽しそうに中国の歌を歌いながら出てきて、私たちに気が付いた瞬間「あっ!」と驚きながらも、すぐに恥ずかしそうにあいさつしてくれました。そんな明るく温かい雰囲気の中、社内に入ると宮城県アパレルの理事長で、及川被服の代表取締役でもある及川秋穂さんが元気に出迎えてくださいました。


 及川被服は、1975年3月に設立された、主に学生・官庁制服等の様々なボトムスを製造しているズボン専門工場です。2001年8月に6名の研修生を受け入れてから、今まで48名を受け入れてきています。現在、及川被服には、研修生6名、技能実習生12名の中国人女性が在籍しています。


代表取締役の及川秋穂さんと高さん

代表取締役の及川秋穂さんと高さん

 宮城県アパレルでは送り出し選抜の際、各企業の代表者が直接中国まで出向いていることは先に述べましたが、その及川被服の選抜ポイントを及川さんに伺いました。「技術がある子!…と言いたいところだが、技術は来日してから教えれば大丈夫。大切なのは性格です。明るく素直な子を選んでいます」とのこと。性格は選抜の際にどう判断しているのかというと、性格は顔に出るものだと思うので、長年研修生たちと過ごしてきた経験から判断しているそうです。いとも容易そうに語った及川さんですが、その判断が間違っていないことは、及川被服に在籍する研修生たちを見れば一目瞭然だと思いました。


 研修生たちの寮で、及川さんの夫人で生活指導員の清子さんにお話を伺いました。たくさんのアルバムを持ち出しながら、研修生たちとの生活・行事での出来事について、自分の子供のことのようにとても嬉しそうに語る愛らしい雰囲気の清子さんが、研修生たちから「ママ」と呼ばれ日本のお母さんとして慕われていることはすぐに合点がいきました。そんな清子さんも『言葉』には苦労しているそうです。言葉が分からなくとも研修生たちの顔を見ればだいたい分かるそうですが、もっと研修生たちを分かってあげたいという気持ちから、ご主人と一緒に中国語の勉強もしているそうです。


冷蔵庫の整頓を指導する清子さんと技能実習生の尹さん

冷蔵庫の整頓を指導する清子さんと
技能実習生の尹さん

寮の中があまりに明るくきれいに整頓されているので、その印象を清子さんに伝えると、研修生たちは料理をよく作り油を使用するので、当番制で研修生たち自ら寮を日々掃除しているのだと教えてくださいました。また、研修生たちは料理をまとめて作り置きすることが多いため、冷蔵庫の中はすぐ一杯になってしまうので、振り分けもしているそうです。そんな工夫も必要な研修生たちの料理ですが、餃子の皮はもちろん、うどんでさえ小麦粉から作ったり、様々な食料の保存方法を実施し、決して食べ物を粗末にしない姿勢には逆に学ぶことも多いと大変関心されていました。


 及川被服では、毎年、寮でクリスマスパーティーが行われます。寮の食堂に研修生たちと飾り付けをしたクリスマスツリーを飾り、みんなでクリスマスケーキを始めごちそうをワイワイ楽しそうに食べます。しかしパーティーは、これでは終わりません。その後、食堂の机・椅子を端に寄せて音楽をかけ、あっという間に食堂はディスコに早変わりします。元々歌や踊りが大好きな研修生たちは、とても楽しそうに踊ります。


クリスマスパーティーを楽しむ研修生たち

クリスマスパーティーを楽しむ研修生たち

 及川被服では毎年、技能実習1年目修了時に技能検定試験の基礎1級を積極的に受検していますが、2008年は対象者全員合格しています。そこで、「基礎1級は浸透したので、今後は、技能検定試験の随時3級も積極的に受検していきたいと思っています。」と力強く熱いまなざしで及川さんは語ってくださいました。日頃から親子のような関係で、まじめに研修・技能実習に取り組んでいる研修生たちなら、その及川さんの期待にきっと応えてくれると思いました。




「どんぶく」のあたたかさにつつまれて――宮城県登米市 アリスモード株式会社

アリスモード 外観

アリスモード 外観

 続いて、アリスモード株式会社(以下「アリスモード」)に伺いました。建物内に入ると、昔の木造の小学校のような暖かみのある廊下の傍らに、研修生たちが作るきらびやかなドレスが飾られていました。


 アリスモードは、1981年5月に設立された、主に高級婦人服(ドレスや上着等)を製造している縫製工場です。2001年11月に6名の研修生を受け入れてから、今まで42名を受け入れてきています。現在、アリスモードには、研修生6名、技能実習生12名の中国人女性が在籍しています。


 早速、代表取締役の三浦昇さんと専務取締役の佐瀬隆明さんにお話を伺いました。


(左から)代表取締役の三浦昇さんと専務取締役の佐瀬隆明さん

(左から)代表取締役の三浦昇さんと
専務取締役の佐瀬隆明さん

 受入れの経緯は、日本人の若者の定着率が低く日本人の若者にも良い刺激となって育ってほしいこと、そして、せっかく培った技術を若い世代に継承したい等の思いから取り入れた、と語ってくださいました。研修生たちは学習意欲が旺盛で、最初から技術を学ぶ姿勢が大変良いこともあり、現在は実際に職場が活性化し、工場内全体の雰囲気がより良くなったそうです。


 研修生の選抜は、三浦さんが自ら中国へ赴くことはもちろん、すでに技能実習を修了し母国に帰ったOGの人もその選抜の場に来てくれ、その人の意見も参考にしながら選抜しているそうです。「やはり同じ国・経験者の目で見ないと分からないこともありますから」と、帰国した研修生たちに協力してもらうことを当たり前のように話す三浦さんに少し驚きましたが、その後すぐにその驚きは納得に変わりました。研修生たちが作業を終えるころ、ほぼ毎日のように三浦さんは研修生たちに体調の確認を始めとし生活の色々な話をしたり、「怒る人は、私くらいですから」という言葉のとおり、研修生たちを時には厳しく注意したり叱ったりする三浦さんは、研修生たちにとってお父さんのような存在なのだと思います。そのためか、帰国しても「お元気ですか?」と頻繁に連絡をしてくる研修生たちが多いそうです。わざわざ選抜の場に駆け付け快く協力してくれるのは、親子の絆で結ばれたような三浦さんと研修生たちだからこそできる技なのかもしれません。


襟付きアイロンの指導をする技術指導員の小野寺節子さんと技能実習生のスンさん

襟付きアイロンの指導をする技術指導員の
小野寺節子さんと技能実習生のスンさん

 アリスモードでは、高級婦人服を製造しているため、高度な技術が必要となります。そこで、各工程をマンツーマンで教えています。工場内には、常に小さめの音量とはいえ最近の流行の音楽等が流れていました。しかしそれは、逆に作業に集中するためかのように、主に研修生に技術を教えている技術指導員の小野寺節子さんも研修生たちも皆真剣なまなざしで黙々と作業をしていました。そんな高い技術を学んでいる研修生たちは、技能実習1年目修了時に基礎1級を受検することが定着化しています(2008年対象者全員合格)。


 また、研修生たちは、市主催の日中友好行事、近隣の主婦たちとの「食の交流会」、お正月には着物を着る等、様々な行事に積極的に参加しています。お正月には研修生たち全員に着物を着せてあげるそうですが、きれいな着物姿が嬉しくて、長距離を歩いたり、両腕を広げ振り袖が飛行機の翼のようになった状態で走り回ってはしゃいでしまうため、はだけてしまうことも多いと、「お母さん」と呼ばれている生活指導員の千葉れい子さんが、微笑みながら話してくれました。


生活指導員の千葉さんとお気に入りの「どんぶく」を着た技能実習生たち

生活指導員の千葉さんとお気に入りの
「どんぶく」を着た技能実習生たち

 千葉さんは、毎年来日した研修生たち一人ひとりにお手製の「どんぶく」(宮城県では、綿入りの羽織をそう呼ぶそうです。)をプレゼントしています。そのどんぶくは、研修生たちに大変好評で、寮の中では多くの研修生たちが自分のどんぶくを着てくつろぐ姿がよく見られます。一つひとつ研修生たちを思いながら心を込めて作られるどんぶくは、身も心もあたためて「ほっ」とできるものなのかもしれません。ここにも、家族の温かみを垣間見た気がしました。