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外国人研修・技能実習に関する成果事例

上位級の受検が多くの実りをもたらしました
(島根県雲南市 島根県中央アパレル協同組合)

2009年2月


島根県中央アパレル(協) 外観

島根県中央アパレル(協) 外観

 技能検定上位級の受検にとても熱心に取り組んでいる組合があると聞き、島根県雲南市にある島根県中央アパレル協同組合(以下「組合」)にお邪魔しました。組合は11の縫製関係会社で構成されており、受け入れた技能実習生の全員に技能検定随時3級紳士服製造、または婦人子供服製造の受検を義務付けています。上位級受検の挑戦はこれまで数々のドラマを生んできました。ここではその一部をご紹介するとともに、上位級の受検がもたらした多くの効果についてまとめました。


 組合が上位級の受検について本格的な取り組みを開始したのは2003年のことです。後述する大田ソーイング株式会社(以下「大田ソーイング」)が既に2000年から取り組みを始めており、上位級の受検には技能の修得以外にも多くの効果があることが分かり、全会一致で取り組むこととなりました。組合代表理事の金山孝行さんは、「大田ソーイングで実績が出ており、『自然発生的に、では組合でも』と始まったのが良かったのではないか」と話します。

代表理事の金山孝行さん

代表理事の金山孝行さん


 「当初、上位級受検について研修生たちに伝えたとき、研修生たちに戸惑いもあったようです。しかし、本制度における上位級の重要性について説明するとともに、自分の実力を試してみないかと挑戦を促し、理解を得ました。


 ところが、組合としても初めてのことでしたので、何をどのように準備すれば良いのか、また、研修生たちにどのようなことを勉強させれば良いのか全く分かりませんでした。


参事の浅野邦夫さん

参事の浅野邦夫さん

 研修生たちは、受検することが決まれば、『先生はいつ来てくれますか』、『練習はいつしますか』と意気込みを見せました。このような研修生たちのやる気に応えるのは大変でした。特に随時3級の学科試験は基礎2級の試験とは違い、漢字にルビを振った日本語となるため、専門用語の理解等、日本語を教えることにも多くの時間が必要となります。


 そこで、組合としては、研修生たちが受検することに理解を示してくれたからには、それに応えたいと、試験実施機関である島根県職業能力開発協会に、どうすれば随時3級を受検し、合格することができるのかということや、受検対策について、何度も相談をし、対策を練りました」と金山さんは話します。



浅野さんが作成した練習問題

浅野さんが作成した練習問題

 学科試験については、組合参事の浅野邦夫さんが中心となって指導します。こういった、「組合が学科試験を指導し、会社が実技試験を指導する」という役割分担が、上位級受検体制を維持する一つの秘訣だと教えてくれました。試験までに、研修生たちは浅野さんが作った約200問の練習問題に取り組みます。「当時、随時3級紳士服製造の問題集はなく、中央職業能力開発協会が出版する2級のテキストから簡単な例題をひろったり、技能実習生用に作り直したりしました(2008年度より随時3級の学科試験の問題が公開されるようになりました)」と、浅野さんは話します。また、練習問題で、研修生たちが間違った個所は分析を行い、その後の試験対策に活かしますと言います。


 「これまでに受検した研修生たち全員が合格しています。この結果は、これまでの成果の証であり、本当に嬉しい」と金山さんは顔を緩めます。


 技能実習生の中には、全員が合格しているというプレッシャーから、「受検をしたくない」と言う者も中にはいます。しかし、組合の全技能実習生が合格しているから大丈夫だということ、また、帰国後に上位級資格を活かして責任者になった元技能実習生がいること、今後、制度の改正によっては、上位級資格が再研修の際に意味を持ってくることを伝えると、全員が受検してくれるとのことです。


 何が一番の課題ですか、という問いに対して、浅野さんは、「レベルが高い研修生たちは、少し教えるだけで、すぐにできるようになるが、その他の研修生たちのレベル向上が課題であり、一番難しい」と言います。その為には、基礎2級受検の段階からしっかり教えておくことが重要だと言います。そうすると、随時3級の受検準備は相当楽になると言います。さらに、研修生たちにはJITCOの報奨金は初回で合格する必要があることを予め伝え、勉強を促しますとのことです。


 ところで、上位級を受検するようになって、どのような効果がありましたか、という問いに対し、浅野さんは、まず、研修生たちのまとまりが良くなったことを挙げました。例えば、合格を目指し、研修生たちは協力し合うようになったと言います。合格している者がいれば、そのノウハウを伝えようとするし、目標に向かって団結することができると言います。次に、日本語についてもよく覚えるようになったと話します。受検がきっかけとなって、日本語のレベルも向上したようです。さらに、目標を与えることによって、それを達成するための力が原動力となり、日々の行動が積極的になり、仕事にも良い影響をもたらしていると言います。


(有)アイコーソーイング 外観

(有)アイコーソーイング 外観

 続いて、組合傘下企業の島根県雲南市にある有限会社アイコーソーイング(以下「アイコーソーイング」)にお邪魔しました。アイコーソーイングは1988年に設立された、紳士服のズボン、カジュアルパンツを製造する、従業員10名の縫製加工会社で、外国人研修生受入れ事業は1996年から開始しました。


 アイコーソーイングが取り組みを始めたきっかけは、今後、外国人研修・技能実習制度が改正されたときに、上位級の合格が再研修の基準となるのではないかという考えがあったからだと言います。


 アイコーソーイングでは、会社の就業時間前後は、会社の設備を開放し、実技試験の練習を行います。その際は、時間を計り、制限時間内にできるように練習します。研修生たちが分からないことがあれば、日本人社員に質問ができるようにしているとのことです。


金山さんと過去合格者の写真の前で

金山さんと過去合格者の写真の前で

 取材した研修生たちで見事合格を果たした、孟令美さんとキョ・セイランさんは「問題集をもらってからは、毎日休み時間や仕事が終わってから勉強しました。言葉の分からないところがたくさんあって覚えるのが大変でした」と話してくれました。


大田ソーイング(株) 外観

大田ソーイング(株) 外観

 その後、組合傘下企業の島根県大田市にある大田ソーイングにお邪魔しました。大田ソーイングは1977年に設立された、紳士服の上着を製造する、従業員50名の縫製加工会社で、外国人研修生受入れ事業は1999年から開始しました。


 大田ソーイング縫製課長の和田範生さんに案内された部屋には、過去の随時3級の合格者の写真が飾られています。これからも、どんどん増えていく予定ですとのことで、ゆくゆくは部屋の壁を一周することになるのではないかと、和田さんは笑います。


縫製課長の和田範生さん

縫製課長の和田範生さん

 和田さんは「受検の支援には相当の負担がかかります。しかし、研修生たちは上位級受検からチャレンジすることの楽しさを学ぶようで、その後の研修意欲の向上が著しいことが一番のメリットです。また、縫製作業の全工程が理解できるようになるので、各自の仕事において、先を読んだ段取りができるようになります」と話します。


 同席した浅野さんは、大田ソーイングの場合、技能検定の試験内容と技能実習の作業内容が一致するので、上位級受検は直接のメリットとなると教えてくれました。大田ソーイングでは「毎日が受検勉強しているようなもの」だということです。


合格した技能実習生

合格した技能実習生

 取材した研修生たちで、見事合格を果たした、王秀伶さんは「合格して写真を撮ってもらい、それが事務所に飾られると、頑張って良かったなと思いました」、「頑張って勉強すれば必ず合格します」と話してくれました。


 浅野さんは、上位級受験の取り組みを始めてから6年目になって、ようやく上位級受検の体制が整うようになり、試験内容の傾向がつかめるようになったと言います。始めの頃は研修生たちから「教えてもらったことが試験に出題されなかった。どうしてくれるんだ」と責められることもありましたと笑います。「初めはいろいろ大変だけれど、何回か受検すればすぐに慣れると思います。組合と会社が協力することが大切です」と話します。


 組合が上位級受検に取り組むことは会社の受入れ状況を把握するのにも良い影響を与えていると言います。それは「監査」という立場で会社を訪ねると話がなかなか出てこないことがありますが、学科試験の先生という立場で訪ねると監査も機能しやすいということです。


 また、会社間でどこどこの研修生たちが合格したということが、刺激となり、全体のレベルが上がっているとのことで、組合としても「あそこの研修生たちが受かったぞ、とハッパをかけている」とのことでした。


 技能検定上位級の受検は、技能の習得以外にこのように、当初は予想していなかった、たくさんの波及効果を生んでいます。


技能実習中の写真

技能実習中の写真

 浅野さんは受検日程の調整と学科試験の日本語の問題が解決すれば、技能検定2級の受検も可能であると言います。その為には、受検勉強用資料を揃えるなどのサポート体制が整い、また、会社側のメリットが一層拡大されることが望まれると言います。


 組合は、今後とも送出し機関に対して、上位級受検が可能な人材を送り出してもらうようにアピールするとのことです。


 今回の取材で、人材育成という趣旨で成り立っている本制度を理解することが何より重要であり、それに則って制度を運用することが結果的に、本制度を円滑に運用する何よりの近道なのだと感じました。そして、思わぬ波及効果がもっと生まれて、新しい発見がより大きな実りをもたらし、本制度を発展させていくことを願っています。