外国人研修・技能実習に関する成果事例
事例1 人を活かし、人に生かされる組織を目指して
(群馬県桐生市 群馬自動車部品製造協同組合)
2009年1月
昨年より半月早く木枯らし1号に見舞われた都心を発ち、列車に揺られること二時間半、紅葉の進んだ赤城山の麓「かかあ天下と空っ風」で有名な群馬県桐生市に本部を置く群馬自動車部品製造協同組合(以下群馬自動車部品製造)をお訪ねしました。
理事長の三田賢一さん
群馬自動車部品製造は、技術・技能を進化融合させ、高品質で競争力の高い新たな世界一商品をタイムリーに供給できる体制づくりに取組むミツバグループの第一次受入れ機関として2005年に設立された若い組合です。
現在、組合では第3期生を受け入れており、傘下の7つの企業で研修生84名、技能実習生46名の計130名が4つの職種で元気に活躍しています。
ミツバグループの中核企業である株式会社ミツバの取締役執行役員を兼務される理事長の三田賢一さんは、「3年間の研修・技能実習を終えた子たちが、それぞれの故国に帰った時、3年間の日本における研修・技能実習が素晴らしいものであったと、家族に胸を張って報告出来るようなものにしたい」と熱く語ってくださいました。
群馬自動車部品製造 外観
今年、7月の理事長に就任時には、「何千年の歴史の中で、日本は近隣諸国から色々な恩恵を受けて、現在の繁栄が築かれました。歴史は繰り返すというわけではありませんが、この事業を通じて、いくばくかでも、送出し国の友好関係に貢献ができて、お互いの国の成長につながればと考えます。個人の人生のわずか3年間ですが、一番吸収力のある多感な時を日本で過ごすことになるので、その時を大切にしていただくような環境を整え、またコミュニュケーションを通して個人の人格形成に役立ちたい」と傘下の企業のトップに話されました。
事務局スタッフ左より
西場さん、劉さん、想田さん、八島さん
事務局を率いる事務次長の西場猛夫さんは、
組合の役割として、初めて日本にやってきた中国人、ベトナム人研修生たちが、日本で生活していくための日本語と社会ルールを早期に体得しスムーズに受入れ企業に融け込んでいけるよう指導していくことを掲げます。
そのため、群馬自動車部品製造は受入れ企業と一緒に現地の面談に立ち会い、優秀な研修生を選抜すること、そして入国後は愛情を持って研修生たちと受入れ企業との架け橋になることが大切ですと強調します。
群馬自動車部品製造が受け入れた研修生は、「日本人よりも真面目」と受入れ企業の評価も高く、若い研修生たちが入ったことにより、工場内の雰囲気が良くなったり、社内旅行の参加率が上がったなどという副次的な効果もあるようですと、目を細めます。
ゴミの分別の講義を受ける研修生たち
研修指導員を務める八島幸子さんは、ミツバグループが永い間地元群馬県の地域に根ざした経営をしてきたこともあり、地元の行政機関からの支援が受けやすく、集合研修が非常にスムーズに進められますと話します。
訪問当日は、地元みどり市から担当の職員の方を迎えて、ベトナム人研修生たちにゴミの分別に関するユーモア溢れる講義の真っ最中で、全員がメモを録りながら真剣に耳を傾けていました。
消防服を着てご満悦のグエンさん
また、寮での集団生活を送る研修生たちにとって、最低限の防火知識・消防知識は不可欠であることから、地元消防署の協力を得て職員の方から直接指導を受けています。研修生たちにとって、初めての経験であり、重い消防服を着せてもらったり、消防車・救急車に乗せてもらったり、水消火器を使った消火訓練を体験し、学んでいます。
群馬自動車部品製造の事務局では、3年間の日本滞在の間に、研修生たちにできる限り日本の文化に触れ、日本を理解して欲しいと望んでおり、そのため、事務局員の特性を活かしたユニークなカリキュラムを揃えています。
その一つが、『茶道』であり、実際に師範の資格を持つ研修指導員の想田博さんが来日した研修生に茶の湯を体験してもらうようにしています。想田さんは、来日した研修生たちに一期一会という言葉を紹介し、これからの3年間はあっという間に過ぎてしまうので、それぞれの場での出会いを大切にし、充実した3年間を過ごして欲しいと伝えます。
フォーの屋台は大好評
また、日本の文化に触れるためには、地域との融和が不可欠であることから、様々なイベントを地域の受入れ企業と協働して開催します。主にベトナム人研修生たちを担当する八島さんは、「昨年開催した地域フェスティバルでは、彼女たちが出店したベトナムのフォーの屋台が大好評でした。今年は生春巻を新たなメニューに加えて、ベトナムフィーバーを起こすんです」と張り切っています。
西場さんは、昨今の外国人研修・技能実習制度に係わる不適正事例の報道を目のあたりにし、第一次受入れ機関の傘下企業に対する指導の重要性を指摘します。
「当組合では、現在研修生たちを受け入れているすべての企業に対する年4回の監査の他に、定期巡回を事務局職員が母語の通訳を帯同して毎週実施しています。巡回では、当組合が独自に作成し、研修生に記入してもらったヒアリングシートを活用し、84名の研修生全員と面談を行います。そして、その結果を年4回全受入れ機関の社長、同組合の理事長以下が参加のもと開催する理事会で報告し、問題点の所在並びに改善方法などを組合とすべての企業が話し合い、共有することとしています。
外国人研修・技能実習制度を活用し、ミツバグループのモットーである「人を活かし、人に生かされる」組織を実現することにより、当グループで研修・技能実習を経験した子たちが、帰国後それぞれの故国で活躍してくれるのが夢です」と力強く話します。
群馬自動車部品製造が研修生たちと受入れ企業との潤滑油として上手く機能している状況を目のあたりにし、制度における組合の強力なリーダーシップの重要性を強く感じました。
「5Sと人材育成」が当社の合い言葉!――群馬県みどり市 株式会社東葉電機製作所
株式会社東葉電機製作所 外観
株式会社東葉電機製作所は、自動車電装部品の大手メーカーである株式会社ミツバの関係会社として1970年に設立され、自動車用ワイパーシステム部品を製造し、世界の人々に安全と快適性の提供を目指す企業です。
社長の根岸一二さん
外国人研修・技能実習制度への取組みについて社長の根岸一二さんにお話を伺いました。
根岸さんは、ミツバ鬼石工場で海外研修生・技能実習生を受け入れていた当時の鬼石工場長より研修生たちのレベルの高さを聞いており、2006年10月にミツバグループが本制度の導入を決定した際、直ぐに受け入れを決定されたとのことです。今年入国した研修生は、同社の3期生であり、現在研修生6名、技能実習生10名が元気に活躍しています。
研修生と共に 結構なお点前で!
海外勤務経験の豊富な根岸さんは、入国したばかりの研修生にとって一日も早く日本に馴染むことがなによりも大切であると考えます。
そのため、社長自ら率先して研修生たちに声をかけるようにしており、社長と研修生たちとの毎朝のラジオ体操風景は社内でも有名とのことです。
訪問当日も、生まれて初めて「茶の湯」を経験する緊張気味の研修生に混じって正客を務めており、暖かい気遣いが感じられました。
根岸さんは、「当社は、ベトナムに関係会社が複数あることもあり、ベトナムからの研修生受入れを決めました。ベトナムの研修生たちは皆真面目で出勤率も高く、チームワークが良く、手先も器用で貴重な戦力として活躍してくれています」と高く評価します。
また、生活指導員を務める製造部長の松井栄三さんは、周囲の日本人作業者とのコミュニケーションがとれる環境を整備することが重要と話します。そのためにはOJT教育が不可欠であり、研修生たちの言葉のハンディを勘案し、専門的な技術・技能を学ぶため、ベトナム語で作成された「作業指導票」を各行程毎に作成し、いつでも参考にできるようにしています。
![]() |
![]() |
![]() |
| 松井さんから 指導を受けるグエンさん |
ベトナム語による作業指導票 |
リンク組付作業をするヴィーさん |
ご自身3人のお嬢さんの父親でもある松井さんは、「外国で暮らす研修生たちの健康管理に力を入れています。個人個人の成長の過程は細かく記録し、現在受け入れている16名の状況は全て頭に入っています。健康に注意するのは良いのですが、ベトナムとの食生活の違いから太ってしまう子もおり、ベトナムから持ってきたアオザイが着れなくなってしまう子もいるんですよ」と目を細めます。
来日して3年が経過し、職場での仕事や生活にも慣れ、毎日ワイパリンク組付ラインで元気に実習しているヴィーさんは「ベトナムに帰国したら学校で日本語をもっともっと勉強して日本語を活かした職場で活躍したい」と明るく語ってくれます。
研修生たちが、企業の第一線での研修・技能実習を活かして、母国で輝かしい人生を歩んでいこうという姿に触れることができました。
最高レベルの技術を学んで欲しい――群馬県富岡市 株式会社ミツバ富岡工場
株式会社ミツバ富岡工場は、株式会社ミツバの日本の各地にひろがる8つの工場のひとつで、群馬県富岡市に1964年に設立された、シートモーター、フロントワイパASSYなど高品質の製品を供給する工場です。
工場長の新井邦彦さん
ミツバ富岡工場
外国人研修・技能実習制度への取組みについて工場長の新井邦彦さんにお話を伺いました。
ミツバ富岡工場では、研修生の受入れは第4期目となります。2年前からはグループの方針に従い、群馬自動車部品製造から受入れを行っており、現在27名の研修生、12名の技能実習生の計39名が元気に活躍しています。
当社はグローバル企業であり、多くの国に進出していることもあり、研修生たちには当グループが持つ、最高水準の技術・技能を修得してもらいたいと思っています。
完成品検査をする陸さん
また企業としては研修生たちの早期戦力化は必須であり、そのため「ILU」を積極的に推進しています。ラインの行程毎に難度が異なりますので、研修生たちの理解度に従って、ローテーションを組み、各ラインの指導員の指導を受けられるようにしています。判らないこと、疑問に思ったことをその場で確認できる体制を整備しています。
| * | ILUとは技能の習熟度を初期はI、中期はL、マスターをUと3段階で最終的にUの文字がゴールになるように指導する手法。 |
新井さんは効果的な研修・技能実習の鍵は優秀な研修生の選抜が重要と認識しており、中国現地での選抜には工場の担当者が参加し、しっかりとした基礎技術のある研修生を選抜するよう心掛けています。
また、同社の特色として新井さんは高い技術を持った日本人から直接指導を受けられる体制を掲げます。
ミツバ富岡工場では、日本人社員に同工場で必要とされる作業の資格保有を勧めています。同社には「道場」と呼ばれる研修指導用の部屋があり、日本人新入社員、パート職員等は、それぞれが従事する作業について、1級技能士資格を持った指導員から直接専門知識を学ぶことができます。
この「道場」で学ぶ研修生たちも多く、技能検定受検時や、担当ラインの変更時などに、指導員から直接作業の「勘」「コツ」を学び、技能を修得していきます。
職員の資格保有状況一覧
1級技能士の鈴木さんから
直接指導を受ける余さん
「電気機器組立て職種、回転電機組立て作業」で入国した余さんも、「道場」の常連です。細かいハンダ付け作業のポイントなど判らないことがある場合は、道場に駆け込みます。余さんは、「判らないことを丁寧に教えてもらえるので、大変ありがたいです」と嬉しそうに話してくれました。
指導員を務める鈴木さんの、「いつも研修生は全員、真剣に学ぶ態度で受講してくれています。教えるに当たって苦労していることは、学科試験の専門用語の意味が判らない子もいるので、必ず実物で提示しながら説明を加えています。実技試験では配線の仕上がり寸法が、どの位にすれば課題どおりにできるか、試行錯誤を繰り返し、一人ひとり、完成の出来ばえを評価し、次回はどのようなことに注意をしたら良いか指導しています。又、実技試験は電線の被膜をカットする工程があるため、安全な刃物の取扱い方を教えてから加工させています。研修生たちが、工場内やスーパーなどで気軽に声をかけてくれるようになりました」との話に、技能を通じた国際交流が着実に図られていることを感じました。







