バックナンバー(2006年度)
事例6 上位級受検促進に地域を上げて取り組む(宮崎南郷町)
2007年1月
宮崎県南郷町は、二十一世紀の新しい潮流に対応し、心のふれあいと思いやりを大切にするまちづくりの推進の一環として盛んな交流活動を続け、国際的な広い視野をもつ人材育成に役立てています。平成二年からは国際交流員を受け入れ、さまざまな分野で町民との交流を行っています。また、国際協力の一環として外国人研修・技能実習制度を活用し、アジア各国からの漁業研修生の受入れも盛んに行っており、研修、技能実習と、三年間に亘って実際に船に乗り込むなどの研修を行っています。
南郷町役場産業経済課の田中課長、鈴木係長にお話を伺いました。
「南郷町では1993年から研修生の受入れを開始しています。現在までにインドネシアを中心に663名の外国人研修生・技能実習生を受入れており、現在は『かつお一本釣り漁業』を中心に49名の研修生と86名の技能実習生が元気に活躍しています。
また、技能実習生の技術向上を実現するために、南郷、栄松、外浦の3漁協を中心に組成された協議会を通じて、船主の意向を踏まえた上で受入れ技能実習生のうち希望者に上位級試験を受検させています。今回は8名が『かつお一本釣り漁業』を、2名が『定置網漁業』を受検します。今回が二度目の上位級受検となりますが、受検生本人だけでなく受検をしない他の技能実習生の意識改革にも役立っています。
【上位級試験の位置づけ】
外国人研修・技能実習制度は、諸外国の青壮年に対し日本の産業・職業上の技術・技能等の移転を図り、それぞれの母国での産業活動に貢献・寄与できるようにするための国際的な人材を育成することを目的としています。
日本での技能実習を通じ、より高い技術・技能水準の修得度合いを確認するための評価基準として設定されたものが所謂「上位級」と位置づけられた試験であり、技能検定職種において基礎1級・随時3級、JITCO認定評価システム試験において中級・専門級がそれぞれ設定されています。
宮崎県立高等水産研修所の協力を頂き、効果的に高度な技能を身につけられるような体制を敷いており、上位級試験の受検を通じて日本の高い水産関連技術を修得し、母国に帰って活躍して欲しいと思っています。今後も受検生を増やすような方策を考え、全員受検を目指しています」
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漁協独自作成の対訳用語集 |
船主による定置網補修作業の手ほどき |
また、近海かつお一本釣り漁業で全国一位の水揚量を誇る宮崎県における漁業研修生の受入れの実務研修等を実施している機関においても、南郷町の方針を踏まえ、研修生・技能実習生の漁業に関する技術、技能の修得支援を進めています。
南郷漁業協同組合の岩切組合長、村部長にお話を伺いました。
「当組合では、町・漁協・船主協会の三者によって運営される協議会が強力なリーダーシップを取って研修事業を推進しています。大日本水産会から上位級受検の打診を頂いた時も協議会に諮り、三者合意の下、技能実習生の技能修得支援の一環として受検を決定しました」
上位級試験のレベルは高く、合格は容易ではありませんが、漁協が独自に作成した専門用語の対訳集を配布したり、ワッチ(*)の時は必ず日本人船員とペアにし、基礎技術について説明してもらうよう船主に依頼するなど、みんなで技能実習生を支援しています。
加えて、宮崎県立高等水産研修所の協力を得、シミュレーターなど高度な設備を使った研修を実施することにより、帰国後に即戦力として十分通用する最新の高度な技術を身につけさせています」
(*)ワッチ:航行上の安全確認行為
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漁船漁業職種中級試験(実技)の風景 |
試験を終えほっと一息! |
上位級試験を終え、緊張もほぐれた受検生に日々の生活や実習状況について話を聞きました。
「先輩やパパさん(船主)はみんな仕事に厳しいけれど、命に係わる仕事なので当たり前だと思っています。判らないことは、いつでも聞くようにしており、みんな優しく教えてくれる。でも間違えをした時はとても怖いです。」(ナフドゥディン君)
「先輩が船のことや網の編み方などいろいろ教えてくれます。試験はとても難しかったけれど、ワッチの時に親方と本(大日本水産会が発刊する教本)を見ながら勉強しました。」(イディン君)
彼らは日本での技能実習を通じて、先進の漁業技術を学びます。彼らの帰国後の夢を聞きました。
「インドネシアに帰ったら自分の船を買って、日本で学んだかつお一本釣りの技術を活かして、故郷アンボンの海で、かつおの一本釣りをしたいです。」(オマ君)
「日本の定置網漁業の技術は大変高いです。水産高校では教えてもらわなかったことをパパさんからいろいろと教わりました。来年インドネシアに帰ったら、自分が卒業した地元の水産高校の先生になって、後輩たちに高い技術を教えてあげたいです。」(セナル君)
宮崎県立高等水産研修所の関屋所長にお話を伺いました。
「当研修所は、昭和13年に設置された『漁村道場宮崎県水産講習所』に始まり、古くから地元宮崎の漁業の発展を支えてきました。平成6年からは、受入れ機関である町・漁業協同組合を支援し、外国人研修生に漁船運行技術、漁船機関運転技術、漁業技術に関する研修を行っています。当研修所では、毎年研修生が来日した際、集合研修の場で漁船漁業関連の研修を行います。どのような項目を彼らに教えるかについては、事前に漁協の担当者と綿密な打合せを行って、カリキュラムを作成しています。日本の漁業技術は世界でも最先端にありインドネシア人研修生にとっても、良い刺激になると思います」
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県立高等水産研修所講師による座学講習 |
同 実技講習(ビン玉網の作成) |
実際に外国人研修生の研修に携わっておられる金谷主査は、
「研修生はインドネシアの水産高校卒業生であり、乗船経験もあるので、当然のことながら、一般的な漁船漁業知識は備えています。彼らに対して研修を行うにあたり、専門用語の知識を早い段階で正確に覚えてもらうことに一番力を入れています。一歩間違えば命に関わる事故に繋がりますし、親方たちとコミュニケーションを図る上でも大変重要なことだからです。
インドネシア研修生は礼儀正しく、真剣で、日本人にない前向きな精神に富んでいます。当研修所では、毎年15名ほどの年少の日本人本科生を受け入れていますが、彼らにとっても良い刺激になっており、いつも彼らにはインドネシア人研修生に負けないよう頑張れ!と口を酸っぱくして言っています。」と日に焼けた顔を輝かしながら話されました。
上位級試験の試験実施機関である大日本水産会の木上課長代理にお話を伺いました。
「大日本水産会では、本制度を通じて日本の高い水産技術を技能実習生に修得してもらうため、 傘下の漁業協同組合に上位級の受検促進を呼びかけています。当会の呼びかけに対し、第一次、第二次受入れ機関共に技術指導のバックアップ体制が整っている南郷町並びに日南市が理解を示して頂き、昨年12月に当該業種で初めて上位級の合格者を輩出し、今回が二回目の受検となります
当会では、「上位級の受検」を高いレベルで技術移転を実現する目的として有効な手段と見なしており、上位級に果敢にチャレンジすることで実習生の技能修得が進み、高い能力を備えた実習生が帰国後母国で活躍してくれることで国際貢献に繋がるものと思っております。
また、宮崎県の特筆すべき事項として他県にはない宮崎県立高等水産研修所の存在を欠かすことは出来ません。同研修所は日本人研修生事業で培ったノウハウを外国人研修生の指導に活かし、効果的な技術移転、人材育成を支援して頂いています。」
今回の取材を通じ、研修生・技能実習生の受入れ先である宮崎県南郷町は、外国人研修・技能実習制度の主旨に従い地域を上げて研修生・技能実習生たちを支えることにより、地元産業の活性化を図り、研修生・技能実習生たちも経験豊かな研修指導員の指導を忠実に守り、OJTにて技能修得を図ることにより、自分の将来の夢を実現するための経済的・技術的基盤を拡充するという仕組みが非常にうまく機能していることを強く感じました。










