バックナンバー(2006年度)
事例2 みごと技能検定2級に合格((株)野口製作所、(有)深沢製作所)
今年、外国人研修・技能実習制度を活用して日本で働く外国人技能実習生が初めて技能検定2級に合格しました。
そもそも技能検定2級は日本人を対象とした中級技能者レベルの検定であり、外国人にとっては、合格するためには技能だけでなく試験問題を読解する日本語能力も必要とされます。今回みごと合格した喜君、王君が受検した工場板金職種(機械板金作業)は、合格率24.1%(平成17年度)の難しい試験です。
JITCOでは、技能実習生の上位級受検を奨励し、合格者に対し報奨金を支給していますが、今回の技能検定2級の合格は制度開始後初の輝かしいものでした。
喜君、王君はそれぞれ株式会社野口製作所と有限会社深沢製作所で実習に励む傍ら、周到な受検準備を行ない今回の栄冠を手にしました。
(株)野口製作所は神奈川県綾瀬工業団地にある精密板金の会社です。昭和39年海老名市にてプレス加工を主体として創業し、昭和46年に綾瀬市に移転し、将来的展望から業務内容も精密板金へと移行されたとのことです。技術革新の時流を背景に通信機器、航空機部品、コンピューター等をてがけ、板金加工を中心にその前後のプロセスである設計・組立へと業務の幅を拡げながら、着実に地歩を築かれています。
現在6期目の外国人研修生を受け入れられ、「社員の能力開発にも力を注ぎ、定期的かつ計画的な教育研修を実施して、人材のレベルアップを図る」という会社の理念通り、研修生・技能実習生への技術・技能の移転に尽力されています。
現在、喜君は現場でスイス製の大型設備を使って、日本語で書かれた仕様書の指示通り、鉄板を曲げていく作業等に取り組んでいます。曲げの角度を何度も測定し、確認し、納得のいくまで繰り返す喜君。コンマ何ミリという集中力と根気のいる作業が続き、こちらも思わず固唾を飲んで見守ってしまいます。
![]() 完成品を測定して、曲げ角度を確認する喜君 |
![]() 自ら指導にあたる野口社長 |
(有)深沢製作所は神奈川県海老名市の本郷工業団地にある精密板金の会社です。昭和26年に東京にて創業し、昭和47年に海老名市に社屋を移転した後、現在の工業団地内に海老名工場を移設しました。「ひらめきを大切にする」「お客様から必要とされる」「働く喜びのある」企業であることを理念とした、徹底したもの作りを行う会社です。
深沢製作所にとって、王君は初めて受け入れた研修生。「やる気のある人に対しては、高い技術を身につけてもらえるように指導する」という言葉通り、研修生・技能実習生の育成に尽力されています。
現在、王君はCADを使って精密板金の加工を行っています。今では会社の中枢として大活躍。「王君の持っている技術は、会社にとって必要不可欠といっても過言ではない」という石井社長は育ての親としてのうれしさ反面、王君の帰国を控えた現在、その後継者について悩んでおられるようです。「第2の王君」を育てるべく、奮闘中とのことですが、今のお気持ちは痛いほどわかります。
三次元CADで板金展開をする王君 |
![]() まるで親子のような石井社長と王君
|
今回の技能検定2級の合格について、二人に合格までの道のりについて聞いてみました。
喜君のコメント:
「試験にチャレンジすることになった時、試験予定日の4か月前から猛特訓をしました。仕事が終わってからも自主的に残り、練習に練習を重ねました。特に学科試験は本当に難しかったので毎晩夜中まで勉強しました。途中、工場団地内の寮の前の道路が工事中となり、うるさかったので一度仮眠をとり、夜中に起きて3時頃まで勉強したのは良い想い出です。合格した時は本当に嬉しかった。」
王君のコメント:
「試験に合格するために、過去の実技試験問題を参考にしながら、30個以上の試供品を作りました。『社長が(練習のために)材料をどんどん使っていい』といいましたが、最初はもったいなくてなかなか使えませんでした。今回の合格は、3年間励まし続けてくれたお母さんへのお土産です。合格した時は、惜しまず材料を提供してくれた社長に恩返しが出来たから、とてもうれしかったです。」
両君のコメントにあるように、技能検定2級合格という輝かしい実績は、本人の努力は当然の事ながら、周囲の協力体制なしには、達成せられなかったことは明らかです。
そこで、両君が勤務する各企業の社長にお話をお伺い致しました。
(株)野口製作所の野口社長のコメント:
永年受け入れている研修生・技能実習生の中から、いつかは技能検定2級の合格者を出したいと思って、本人の能力ややる気を見ながら指導してきた。今回は4回目の挑戦だったが、これでようやく自分の夢も叶った。喜君が合格したことは自分のことのようにうれしい。
(有)深沢製作所の石井社長のコメント:
初めて受け入れた研修生が王君だった。やる気もあり、手先も器用で、飲み込みの早い彼に、もの作りのおもしろさを教えようと思った。そして、目の前にある仕事をただ日々こなしていくだけでなく、技能検定2級に挑戦し、結果をだすことは、日本で培った知識や技能のレベルを証明することができると思ったので、応援した。合格できて良かった。
![]() 合格証をもらって笑顔! |
![]() 合格したときの気持ちを語る喜君と王君 |
今回取材した喜君と王君に共通することは、「日本に来てたくさんのものを得た充足感」がその表情に表れているということです。また、二人をサポートされた両社の物作りに対する真摯な態度とたゆまぬ努力の姿勢が、喜君と王君の「難しそうだけれど、挑戦してみよう」という気持ちを後押ししたのだと思います。
外国人技能実習生が初めて技能検定2級に合格したという今回の快挙は、本人の志の高さや努力の賜であることは言うまでもありませんが、日々現場で指導にあたる受入れ企業のサポートなしには為し得なかったことも事実です。
日本という異国の地で、高い目標を掲げ、その達成に向かって努力し、今回の栄冠を手に入れた喜君と王君の姿が、後に続く多くの技能実習生の励みとなり、受入れ企業のサポートの下、上位級の技能評価職種へチャレンジする気運がますます高まっていくことを願っています。



三次元CADで板金展開をする王君





