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バックナンバー(2006年度)

事例1 研修生・技能実習生のメンタルケアを大切に考えながら
(中部工業株式会社)



   中部工業(株)は、愛知県豊田市にあり、1965年にトヨタ自動車(株)向けの自動車用窓枠硝子組付加工等の会社として発足、その後、大手自動車・硝子メーカー等数社の協力会社として発展し、現在、アメリカ、カナダ、タイ、インドネシア、モンゴル、中国等海外に18の現地法人を有するに至っています。
   現在、インドネシアの現地法人の社員教育として、研修生・技能実習生約210名を自動車部品製造技術(プラスチック成形)にとどまらず、安全衛生の観念、日本的QCの理解等の修得を目標に受入れを実施しています。研修生・技能実習生も同じ企業の一員です。研修生・技能実習生の心のケアを大切に考えながらどのように受入れているか、研修生・技能実習担当課長石渕宏さんから伺った工夫や努力をご紹介します。

   企業の存続にはなみなみならぬ努力が必要になってきます。社会の変動や企業間の競争等により「効率の追求」のニーズは欠かせませんが、このような中では人間尊重がおろそかになっていく傾向があります。しかし、顧客の信頼を勝ち取るには「心」のこもった仕事をすることが重要で、それは企業に人間中心主義の精神がなければなし得ません。当社は一人ひとりが魂のある人間として活躍できる土壌づくりを大切に考えていますが、研修生受入れもこの精神で行っています。

(1)出国前の対応策
   現地選抜では、適性テスト(一般常識・適性検査)、面接(家族も同伴)、勤務状況調査を実施、事前教育は6か月をかけ、日本語学習のほか食文化を含む生活習慣や交通ルール等について予備知識を与え、日本での研修の心構えを培います。

(2)入国後のカルチャーショック対応策
   研修生は、住み慣れた母国から異質な文化の日本で生活を始める訳ですので、事前研修で予備知識を与えたとしても、カルチャーショックを受けます。必ず遭遇するもので、このカルチャーショックを短期間で軽く通過して日本社会に順応(適応)していかなければなりません。
   日本の物価は高く貨幣価値も違いますので、支給される研修手当で生活していく方法を教えます。
   インドネシアでは、用便後に水を使う習慣がありますので、必ずトイレットペーパーを使うよう、また、入浴については、冬場は浴槽につかることを指導します。寮の大浴場での入浴はとても恥ずかしがるので、心情を察しながら根気よく行います。
   宗教に関しては、多くが熱心なイスラム教信者のため、お祈りの部屋を設けて休憩時間や昼休み時間に祈ることができるよう、また、断食あけのお正月には数日間の休暇も取れるようにしました。

(3)トラブル対応策
   トラブルの原因の一つに、ことばが通じないことによる日本人従業員との意思疎通の欠如があげられます。返事は「はい」とよいのですが、込み入った内容になると理解していないことがあったり、日本人従業員の親しみを込めた冗談などが通じず誤解を招くことがあります。入国前の日本語教育や入国後の非実務研修を重視しても、なお、ことばの問題は課題が尽きず、ことばの使い方や接する態度についての社員向けマニュアル作成を考えています。通訳として、現地法人からインドネシア人社員を「企業内転勤」させたり、3か月に1回セクションの上司とのオープン意見交換会、年1回の社員旅行(費用は会社負担)、スポーツ・バーベキュー大会などで社員一同が研修生・技能実習生とふれ合う機会を多く作っています。

(4)ホームシック対応策
   寮は二人一部屋ですが、部屋割りは研修生・技能実習生の自主性に任せている為、同室者同士のトラブルはありません。気の合ったもの同士の会話や気配りが心の平安につながるのでしょう。また、談話室にはインターネットを数台設置して、家族との連絡や母国の新聞の自由閲覧が可能です。大学卒の研修生・技能実習生が多く、母国の情報に触れることで安心するのだそうです。

(5)その他
   JITCO作成の「母国語による自己診断表」を当社用に組み替えて独自のカウンセリングシートを作成して、健康状態、人間関係、仕事関係、その他の悩み等、まず、研修生・技能実習生一人ひとりを知ることに努めています。
   家族の生活の心配を取り除くため、現地での給料を最低賃金額で支給しています。日本での研修期間の処遇や技能実習期間の労働契約、研修と技能実習制度の違いを理解させ、研修生・技能実習生間、企業間のトラブルを防いでいます。

 



完成品を測定して、曲げ角度を確認する喜君
カウンセリングシート(日本語版)
自ら指導にあたる野口社長
カウンセリングシート(インドネシア語版)


    石渕宏さんからお話を伺って、研修生・技能実習生に対して研修・技能実習の制度についてしっかり説明すること、研修生等を人として尊重し平等に接すること、日常生活面で研修生・技能実習生に運営を任せられる部分は自主運営をさせることという姿勢が、研修生・技能実習生のメンタル部分の健康を支えているのだと思いました。
   研修生・技能実習生はスポーツが大好きで、よく近くのサッカー場でプレーを楽しんでいるそうです。実はカルチャーショックの効果的な対処法の一つとしてレクレーションの開催があります。スポーツ、ハイキング、行事への参加などで、特に症状の強い人にはその人の趣味や得意なもので自信の回復効果があると言われています。まさに地域環境にも恵まれていると思いました。

   石渕宏さんは、研修生・技能実習生が自発的に作った思い出のアルバムをプレゼントされたそうです。皆でお金を出し合ったらしく、事前に言ってくれれば援助したのにと、うれしそうに話してくれました。充実した研修・技能実習生活を送っている心身ともに健康な青年の顔が見えてきました。
   あまり地域住民との交流はありませんが、それでも日本人の女性と結婚を考えている技能実習生もいるそうです。


研修生・技能実習生作成のアルバム(表紙) 研修生・技能実習生作成のアルバム(研修生・技能実習生のプロフィール) 研修生・技能実習生作成のアルバム(集合写真)

研修生・技能実習生作成のアルバム(左:表紙、中:研修生・技能実習生のプロフィール、右:集合写真)


ここに紹介したのは、企業単独型受入れのケースですが、現地法人への技術移転の目標を達成するためには、まず、研修生・技能実習生の心の健康なくしてはなし得ません。技術指導とは異なった地味な役割ですが、研修生・技能実習生の心への取り組みが社風と相まって、しっかり考えられケアされている好事例だと思いました。団体監理型受入れのケースにも大いに参考になる部分があると思います。


サッカー場での集合写真

サッカー場での集合写真