優秀賞 『景岡先生』
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株式会社カノン 王 錕(技能実習生) |
今頃の日本は「目に青葉山ほととぎす」の季節で、桜も満開の季節だ。今日の昼頃、会社の人達と近くの公園へお花見に行った。温かい家庭みたいに皆で弁当を食べて、話をしたりしながら、桜が徐々に散っていく姿を楽しんだ。けれど、この幸せな光景に景岡先生はいなかった。夕方、先生が使っていたテーブルの前に立つと、先生についての思い出が溢れてきた。
二年前、私は初めての国の憧れと興味を持って日本にやって来た。大山という山に洗練された自然美と研修をする会社の規模の小さいことに気持ちは複雑だったが、会社の親しみやすい人達と出会って、不安も少なくなった。すぐに日本語の先生のことを知った。80歳の爺さんと聞いてがっかりしたが出会ってみると、髪は真っ白でも一本一本元気に立っていて、笑顔の優しさは私に力を与えてくれる先生だった。
日本語の勉強の一つとして、日記を書き始めた。最初は、すべてが新鮮で感想がいっぱいあったが、二ヶ月後「この日記が嫌だな」と思い始めた。毎日研修と食事と睡眠の繰り返しの単調な生活、何を書けばいいのかわからないので、ある日、日本の歌の歌詞を写し取って「この歌を歌いたいです」と書いて先生に渡した。多分日記帳はいつものハンコの印が押してあるだけと思っていたら、先生から返ってきた日記を開くと赤い字が目に躍り込んできた。漢字に一字一字振り仮名がしてあり、その赤い字が火のように目に染みた。前のページをめくると、それぞれの疑問に答えと説明がしてあった。間違ったところと良いセンテンスは波形記号と下線がしてありました。また、日本語授業中のこと、私が早く文章を読んだので、年齢の高い先生にはよく聞こえなかったようで気まずい顔をされたことがあった。私は、先生への不尊重と学習態度も悪いと思い、それからは日記を毎日の義務ではなく日本語の勉強と先生との絆として、真面目に書き続けた。
先生は、日本語の授業だけでなく、生活指導員でもあった。お正月には寮へわざわざお餅を持ってきてくださったり、温和で優しい人柄は皆に愛されていた。何かあったらいつも先生に相談をします。朝礼の時先生が口を開くと皆話に耳を傾けていて、周りに信頼され、偉ぶらず、上にははっきり物を言う、理想の上司ですね!同時に先生は自らを律することの大切さを学ばせてくれた。今も先生の姿を思い「自分に厳しく」という戒めをかみしめている。この優しさと厳しさは、8年間毎朝5時起きて中国語の勉強をされていた姿からも、見て取れると思う。
あの朝、先生が家で倒れて病院へ運ばれたことを耳にして、「嘘!何で倒れたの、今の様態はどうですか」と質問すると、「景岡さんは、脳溢血で昨夜突然倒れて入院されたけれど、今は大丈夫らしいから心配しないで」と主任の高谷さんが話してくれた。先生は倒れてからというもの日一日と病状が進み、胃の手術をしたことがきっかけで急に悪くなられた。意識はあっても御飯が食べられなくなり、会話もなくなった。先生のお見舞いに行った会社の人達が「景岡さんは元気になりそうだね!」と話していたのを聞いた。「先生早く元気になって帰ってきて」と皆毎日お祈りしていた。
そして、あの暑い7月24日の朝、先生が良くなったらという気持ちの私は会社に行き、いつもなら優しい笑顔で「おはよう」と挨拶をしてくれる高谷さん達が、凝り固まった雰囲気の中で悲しい顔でいるのを見た。「景岡さんが昨夜亡くなりました」カラカラと、私の頭の中は雷鳴が鳴り響き真っ白になりました。「嘘!この間先生は良くなったと言ったじゃないですか」私の涙がハラハラとこぼれた。「何で嘘をついたの、どうして、どうして」と私は叫んだ「最後の一目も会っていないし、私たちの授業もまだ終わっていないし、先生との約束も果たしていないし……」皆悲しくて泣いた。会社は先生のご逝去の中で沈んでいた。
二日後、先生のお葬式に出席した。告別式の中で、先生の平凡で偉大な一生を知りました「感動」「悲痛」言葉に表現出来ないくらい。先生は私に短い師徒関係の中で多くのことを教えてくださいました。先生は私の心の中にずっと生きています。ずっと、ずっと……。
受賞の喜び
インターネットをしていた私は、事務の松本さんに呼ばれた。松本さんは、両手を私の肩に置いて「おめでとう!」と今回の受賞を知らせてくれた。「えっ、本当に?本当!!」何回も確かめてやっと本当だと思ったら、仲間が私を抱き上げて「おめでとう!」と祝福してくれた。私は幸せにつつまれていた。
これは、景岡先生との約束だ。「先生!喜んでくださいますか!」この作文を先生の奥さんに送って、奥さんから「更に頑張りなさい」と激励の返事もいただいた。
感動は豊かな人生のための大切なエッセンスだ。日本へ来て、視覚、聴覚、味覚を通して日本の心を感じ、いろいろな感動を受けた。自分自身がこの感動のなかでだんだん変わっていくのがわかる。これは、社長さん、会社の方々、いつも胸の中励ましてくれる人のお陰だ。これからもあり続ける人生に全力を挙げて仕事をし、勉強をし、大いに夢を抱き、その夢に向かって邁進したい。今回の受賞を心から感謝します。ありがとうございました。





